小説作成中 仮題:黄金のゴキブリ

新しい小説を作成します。推敲やまとめは完成してからやります。

つまり、荒書きです。

小説「黄金のゴキブリ」書き始め

 仮題「黄金のゴキブリ」 

 

 

無から放たれた五つの光、赤、白、黄、青、そして黒。

それは、光という名の振動であった。

 

 

 真っ暗な部屋に一点の発光体。

そこからは様々な情報がただ、垂れ流され続けていた。

 

 

国民不在の政治、すでに破綻した経済の緩やかなる崩壊への演出と、

崩れ去ったものにしがみつこうとする慣習から脱却できないでいるあがき。

 

自分には起こらないと信じ続ける殺傷事件、官僚や政治家が使い切った金銭を国民が肩代わりするという債権回収的な税金問題。

 

人口減少を踏まえた企業の顧客の囲い込みという依存麻痺させる戦略・戦術。

未来の子供たちに絶望という後悔を残す目の前のことしか見ない浅知恵の数々。

 

思惑が思惑を生み続け、洗脳と混乱に導くブラックボックス。

それでいて、平静でいなきゃいけないという「べき論」の横行。

 

 

おかしくなりそうで狂いたくなる。

いや、この世界こそが狂っているのだ。

だが、何がこの世界から脱却しないようにつなぎ留めているのだろうか。

 

 

 


 

 

  万年床に埋もれた物質は体を為しながら、特定の部位をかきむしっていた。

布団に点在する血と皮は、依存体の餌となり、共存共栄を保っていた。

ひとつの循環型社会として・・・。

 

 

  好和は身震いした。暗闇に包含された冷気が背筋を駆け上がる。

(もう我慢の限界だ!)そう思うとのっそりと立ち上がり、

尿を放出しながら二度の振動と大きなため息に落ち着いた。

そして鳥肌をさすりながら、どんよりとしたぬくもりの中の再固定化した。

 

窓際には、ほのかな光の額縁があり、そのキャンバスには思い絶ゆ深い闇が描かれ、

その闇は囲われた空間全体に投影していた。 

黄金のゴキブリ続き

「おにいちゃま、私の帽子はどこ?」

 

 

「はい!ここにありますよ〜」

 

 

湯上りのトメさんにお気に入りの帽子を手渡すと、
ニッコリと笑って

 

 

「ありがとう!おにいちゃま」

 

 

トメさんが帽子に夢中になっている間に
着衣を進める。

 

トメさんの意識が帽子から離れるまでの一瞬の勝負だ。

 

 

着衣が8割程度終わると一息を入れ、また集中する。

 

 

入浴日である他のお年寄りたちの行動を把握しながら。

 

 

介護に従事して13年。
ひとつだけ心掛けていることがある。

 

お年寄りは自分たちの人生の先輩だ。
だからこそ、尊敬の念を持って接しなければならないと。

 

 

認知症の方には丁寧語が分かりにくい場合もたくさんある。
言葉には、親しみやすさを持たせ、少しぐらい尊敬語から外れてたとしても、、、。

 

 

常に失礼にならないかと悩みながら、自分で納得の線引きを行うのだ。

黄金のゴキブリ続き

 

「トメさん、実はトメさんだけに特別に、

トメさんが大好きなお菓子を買ってきたんですよ。二人でこっそり食べようと思って。

みんなにばれないように、

お外で食べるので今のうちに上着と靴下を履いちゃいましょう。

よろしいですか?」 

 

 

得意げに演出すると、トメさんは目を輝かせながら、

内緒よ!という手振りを口元で見せ、微笑んだ。 

 

 

上着を渡すとさっと腕を通して、靴下に取り掛かる。 

 

そう、やって頂くことが大事なのだ。

 

 

使わない能力は衰えていくのだから。 

 

 

トメさんが、トメさんらしく自分の力で生きていく。

 

 

私たちはそれをサポートさせて頂く影の存在なのだ。 

 

 

業務の都合やスケジュールを理由にして、

何でもテキパキとやってしまう介護施設も多いと聞くが・・・・・。 

 

 

トメさんは食べることが大好き。

 

だから、自分の手でなるべく長い間食事をとって欲しいという願いもある。 

 

人から食べさせてもらうことは、食事の魅力を半減させる。

 

一口の適量、ペース、好みでの食べる順番が失われてしまう。 

 

与えすぎることはその人の能力を奪うこと。そして楽しみまで奪ってしまう。

 

 

そう考えると良かれと思うことの中には、

そうでもない要素も多々含んでいることがわかる。 

 

 

 

「お兄ちゃま、この靴下なかなか履けないのよ」 

そういって、被っていた帽子を差し出す。 

 

「どれどれちょっと見てみますね。

あ、そうそう、トメさん、トメさんの大好きなお菓子ご用意してますからね!」

耳元でささやくと同時進行で帽子と靴下を差し替える。

意識を一時的にお菓子へと固定化する。

 

「トメさ〜ん、ごめんなさ〜い。私の靴下渡しちゃってて。

大きいはずです。これがトメさんの靴下です」

おちゃらけて靴下を手渡すと

 

「もう〜お兄ちゃまったら〜」

 

笑顔で靴下を着用する。

 

 

トメさんの世界の中では「その時は」帽子は「絶対的な靴下」なのだから。

 

 

そう、僕らの仕事はある意味で、嘘をつく仕事でもある。

たくさんの嘘をつく。

 

湯冷めをして風邪をひかぬように

着衣を進めるためだけにすでにいくつもの嘘をついている。

 

糖尿病の疾患を抱えたトメさんにはお風呂上がりにお菓子が提供されることはない。

 

ティータイムとの名を借りた水分補給が待っているだけだ。

 

 

僕は、その都度罪悪感を感じていた。

 

 

命を健康に近い状態でつなぐことと

当人の精神的自由・こころの充足感とのせめぎ合い。

身体を壊してもやりたいこと。当人が自己決定する命の使い方。

尊厳を損なわないようにそれらのバランスをとることの難しさ。

 

 

なるべく嘘をつかずに生きていけたらと思う。

思いながらもそれは、願いへ変質し、

日常的煩雑さに忙殺され忘却の彼方へと虚しく鳴り響くのみ。

 

 

環境、はたまた、社会福祉の不十分さを理由にして逃げているのかもしれない。

 

 

父はどのようにして命を終えたのだろうか。誰かがそばにいてくれたのであろうか。

何を感じながら終末を迎えたのだろうか。